2006年流行語大賞を総覧!イナバウアーから20年後の現在まで
2006年の年間大賞に「イナバウアー」と「品格」が並び立った背景には、当時の日本人が求めていた「美しさ」と「精神的支柱」への渇望がありました。
2006年2月のトリノ冬季五輪において、日本選手団が極度のメダル不振に喘ぐなか、フィギュアスケート女子シングルの荒川静香選手が放った輝きは鮮烈でした。フリースケーティングで披露された、背中を大きく反らせてリンクを滑走する「レイバック・イナバウアー」は、得点に直結する必須要素ではないにもかかわらず、自身の表現力を極限まで高めるためにプログラムに組み込まれた技でした。この凛とした決断と氷上の美しさが、停滞感の漂っていた日本中に圧倒的な勇気を与え、文句なしの大賞選出へとつながりました。
一方、出版界で前代未聞の社会現象を巻き起こしたのが、数学者・藤原正彦氏による新書『国家の品格』でした。新自由主義的な市場原理や論理至上主義が席巻する風潮に対し、日本古来の「武士道精神」「情緒」「もののあわれ」の大切さを説いた同書は、ビジネスパーソンからシニア層まで幅広い共感を呼び、200万部を超える大ベストセラーを記録しました。のちに坂東眞理子氏の『女性の品格』など一大「品格ブーム」へと波及し、混迷する時代における行動指針として「品格」という言葉が定着しました。