桐生織物が世界で再評価される理由と1300年の進化
昭和52年(1977年)に経済産業大臣(当時・通商産業大臣)から国の伝統的工芸品に指定された桐生織は、単一の技法を指す名称ではありません。長い歴史の中で培われた「7つの代表的な伝統技法」を包含している点に、他の産地には見られない圧倒的な多様性があります。
- お召織(おめしおり):強い撚りをかけた緯糸(よこいと)を織り込み、湯もみによって独特の「シボ(細かな凹凸)」を出す最高級先染め絹織物。徳川11代将軍家斉が好んで着用(お召しに)なったことが名称の由来。
- 緯錦織(ぬきにしきおり):多彩な色糸の緯糸を用いて、絵画のように重厚かつ華麗な文様を織り出す技法。帯や丸帯に多用される。
- 経錦織(たてにしきおり):経糸(たていと)の色の組み合わせによって幾何学文様や緻密な柄を表現する古代由来の高度な技法。
- 風通織(ふうつうおり):表と裏で異なる色糸を用い、二重組織にして文様部分で表裏の糸を交差させる技法。生地の間に空気が通るような袋状の空洞ができる。
- 浮経織(うきたており):地組織の上に経糸を浮き上がらせて立体的な幾何学模様を形成する技法。
- 経絣紋織(たてかすりもんおり):経糸をあらかじめ防染して染め分けた絣糸を使い、かすれたような繊細な風合いと紋様を織り出す技法。
- 綟り織(もじりおり):経糸同士を交差させながら緯糸を通すことで、隙間を作り出す通気性に優れた織物。夏の紗(しゃ)や羅(ら)の起源となる。
なかでも「桐生お召」の特徴は際立っています。極限まで撚りをかけた八丁撚糸を使用することで生まれるきめ細やかなシボは、光の乱反射による上品な光沢を放ち、肌にまとわりつかないサラリとした極上の着心地をもたらします。さらに、生地自体のコシが非常に強いため、着物愛好家の間では「着崩れしにくく、帯の締め心地が抜群である」と長年にわたり絶賛されています。
また、桐生織物帯の種類も極めて豊富です。フォーマルな留袖や訪問着に合わせる格式高い袋帯から、街着やお稽古ごとに重宝される軽やかな名古屋帯、さらには現代のカジュアル着物ファンを虜にする独創的な半幅帯や男性用の角帯に至るまで、多種多様なニーズに応える生産体制が整っています。