てつのくじら館が無料の理由とは?潜水艦あきしお内部と呉観光の全貌
館内は3階建ての本館展示室と、屋外に据え付けられた実物潜水艦「あきしお」の2つのエリアで構成されています。見どころは大きく分けて「掃海艇の歴史」と「潜水艦の知られざる世界」の2本柱です。
1. 命を賭して航路を拓いた「掃海艇」の戦後史
1階から2階にかけて展開される掃海(そうかい)展示は、世界に誇る日本の機雷除去技術と、その悲壮な歴史を伝えています。太平洋戦争終結直後、日本近海には連合軍によって約6万個もの機雷が敷設され、日本は事実上の海上封鎖状態にありました。
戦後の日本復興は、命がけで機雷を掃海し、海上の安全航路を切り拓いた元海軍軍人・海上保安庁・海上自衛隊の隊員たちの手によって始まりました。展示室では、磁気機雷に反応しないよう木造やFRP(強化プラスチック)で作られた掃海艇の構造、1991年の湾岸戦争後にペルシャ湾へ派遣された部隊の過酷な活動記録など、教科書では深く触れられない日本の戦後史の深層を学ぶことができます。
2. 潜水艦「あきしお」の息をのむ内部空間
3階の連絡通路を渡ると、いよいよ巨大潜水艦「あきしお」(1986年就役〜2004年除籍)の内部へと足を踏み入れます。艦内は機密保持のために一部機器がモックアップやカバーで覆われているものの、操舵席、発令所、潜望鏡、士官室、乗組員の居住区などが現役当時の空気感のまま保存されています。
特に圧巻なのが、今も実際に覗くことができる実物の潜望鏡です。レンズを覗くと、呉港を行き交うフェリーや対岸の工場群が鮮明に拡大されて視界に飛び込んできます。また、大人がすれ違うのも困難な狭い通路、ベッドの高さが数十センチしかない過酷な3段ベッド、陽の光を一切浴びずに数ヶ月を過ごす乗組員たちの生活再現は、息をのむほどのリアリティを持っています。
艦内各所に配置された案内スタッフの多くは海上自衛隊のOB(退役自衛官)です。「当時の航海での食事はどうだったのか」「潜望鏡深度での緊張感はどれほどか」など、実際に潜水艦に乗務していた当事者ならではの貴重なエピソードを直接聞くことができる点も、この史料館が持つ類まれな付加価値といえます。