大山顕の現在と軌跡|工場萌えから新写真論へ至る知の変遷
大山顕氏が放つ独自性の源泉は、そのユニークなバックボーンにあります。多くの純粋芸術系写真家とは異なり、同氏の思考の根底には「工業デザイン」と「システム工学」の視座が色濃く息づいています。
1972年生まれの大山氏は、千葉大学工学部工業意匠学科に進学。デザインや人間工学、情報構造の基礎を学びました。卒業後は松下電器産業(現パナソニック株式会社)に入社し、情報機器のデザインやユーザーインターフェース(UI/UX)の企画開発に従事するという、極めてロジカルなエンジニアリングの現場でキャリアをスタートさせています。
退社後に写真家・フリーライターとして独立して以降、Webメディアの草分けである『デイリーポータルZ(DPZ)』の初期・黄金期から看板ライターの一人として参画。「テトラポッドの分類」「高架下の空間観察」「団地の間取りとベランダ」といった、日常の見過ごされがちなディテールを工学的かつユーモラスに解剖する記事群で熱狂的な支持を集めました。物体の機能美や配置の必然性を論理的に読み解く姿勢は、まさにメーカー出身者ならではの強みと言えます。