デイゴの花が咲き乱れると不吉?名曲『島唄』に隠された衝撃の真相とは
地元沖縄の古老たちは、デイゴの梢を見上げながら毎年の天候を占ってきました。「今年のでいごは狂い咲きだ、屋根の補修を急げ」という声が、かつての農村集落では現実味を帯びて飛び交っていたのです。なぜこれほど華やかで美しい花が、災厄の前兆として忌み嫌われ、不吉とされる理由となったのでしょうか。
第1の背景には、沖縄の過酷な自然史があります。四方を海に囲まれた孤島群において、海水を含んだ暴風(塩風)と豪雨をもたらす台風は、農作物を壊滅させ、かつては集落全体を飢饉に追い込む絶対的な脅威でした。樹幹全体を血の色に染め上げるほどの見事な満開は、島民にとって「美しさへの感動」以上に「自然の猛威に対する本能的な恐怖」を想起させる引き金だったのです。
そして第2に、近年の植物生態学および気象データの蓄積によって、デイゴの花台風言い伝えの真相には驚くべき科学的裏付けがあることが判明しています。デイゴはマメ科の落葉高木であり、冬から初春にかけての土壌乾燥や寒暖差といった環境ストレスにさらされると、種族維持の本能から一斉に花芽を分化させる特性(豊花現象)を持ちます。
気象関係者の分析によると、冬から春先に晴天が続き少雨・乾燥状態が強まった年は、太平洋高気圧の勢力配置が初夏以降に北西太平洋で発達しやすい偏西風パターンの前哨戦となっているケースが多々あります。つまり、「デイゴに極度のストレスを与えて満開を誘発した気象条件」そのものが、夏場に巨大台風を沖縄近海へと引き寄せる大気海洋相互作用と密接にリンクしているのです。祖先たちが何百年の観察を通じて紡ぎ出した「咲き乱れると嵐が来る」という経験則は、現代の環境科学の視点から見ても理にかなった気象予知の知恵でした。