都はるみ『おんなの海峡』誕生秘話と現在|猪俣公章が紡いだ名曲の深層

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日本コロムビアから1972年10月10日にリリースされた『おんなの海峡』は、都はるみという稀代の歌姫がキャリアの成熟期へと踏み出した記念碑的なシングルです。1964年のデビュー曲『困るのことヨ』や大ヒット曲『アンコ椿は恋の花』で見せた力強い「はるみ節」のイメージから脱却し、陰影に富んだ女心を歌い上げる本格派叙情演歌へのシフトを決定づけました。

本作を手掛けたのは、昭和演歌を代表する作詞家・石本美由起と、メロディの魔術師と呼ばれた作曲家・猪俣公章のコンビです。編曲は竹村次郎が担当し、ストリングスと哀愁を帯びたギターの音色が北の冷たい海原を想起させる緻密なサウンドスケープを構築しました。当時の制作現場を知る音楽ディレクターの手記や証言によると、猪俣公章は都はるみのトレードマークであった激しい唸りをあえて抑制させ、「抑え込むことで逆に溢れ出る情念」を引き出すボーカルディレクションを徹底したと伝えられています。

この緻密な計算は的中し、シングル盤はオリコンチャート上位を記録。それまで若さ溢れる民謡調演歌の旗手と目されていた都はるみは、本作を通じて大人の鑑賞に堪えうる本格的なドラマを表現できる唯一無二の表現者として、歌謡界での確固たる地位を確立しました。

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