エヴァ病室シーンでなぜ?シンジ「最低だ俺って」の衝撃理由と庵野監督の意図
この歴史的な問題シーンは、スタジオのアフレコ現場においても極限の緊張感の中で生み出されました。当時、シンジ役を務めていた声優の緒方恵美さんは、女性である自分自身の感覚から、なぜ昏睡状態の少女の前で少年が自慰行為に至るのか、その心理の不可解さに激しく苦悩したと回顧録やインタビューで明かしています。
テイクを重ねても納得のいく表現に辿り着けず追い詰められていた緒方さんを救ったのは、シンジの父・碇ゲンドウ役を演じた立木文彦さんからの助言でした。スタジオのロビーで悩む緒方さんに対し、立木さんは男性の視点から次のように語りかけたと伝えられています。
「男っていうのはね、情けない生き物なんだよ。どうしようもない極限に追い詰められた時、そういう衝動に逃げてしまうことが本当にあるんだ」
この率直な言葉によって、理屈ではない男の脆さと惨めさを腑に落ちさせた緒方さんは、自責の念に震え声が裏返るようなあの魂のテイクを完成させました。一方、メガホンを取った庵野秀明監督は、テレビ版最終2話に対するバッシングや、アニメヒロインを性的な対象として消費し現実から逃避するファン層に対して強烈な苛立ちを抱えていました。「あなたたちが感情移入しているシンジの実態はこれだ」「美しい虚構を都合よく消費するな」という、痛烈な現実への突き返しこそがあの病室シーンに込められた演出意図だったのです。