葛飾応為の光と影|北斎を超えた天才絵師の画力と失踪の真相
漫画家・江戸風俗研究家の故・杉浦日向子氏による名作漫画『百日紅(さるすべり)』(のちに原恵一監督によりアニメーション映画化)は、葛飾応為という存在を一般層にまで一気に浸透させました。作品の中で描かれたお栄は、美人画の天才でありながら不器用で、煙草を手放さず、無頼を気取りつつも父への複雑な愛憎を抱く魅力的な女性として描かれています。
SNSや美術館の来場者アンケート等で現代のファンが寄せる声を見ると、彼女への熱狂は単なる「北斎の娘」という枠組みを完全に超えていることが分かります。
「吉原格子先之図の前に立った瞬間、闇の深さと提灯の生々しい熱気に息を呑んだ」
「家事を一切放棄して絵だけに生きたという潔さが、自立した女性として最高にかっこいい」
「レンブラントやフェルメールに匹敵する光の表現が、江戸末期の日本に存在していた衝撃」
同時代の絵師・渓斎英泉は自著『无名翁随筆』の中で、お栄について「父に従いて今も画を業とす、名手なり」と短いながらも最大級の賛辞を贈っています。当時の男社会であった浮世絵界において、同業者からも一人の独立したプロフェッショナルとして揺るぎない敬意を集めていた事実が裏付けられています。