スマートウォッチの睡眠はどうやって判定?腕だけでわかる驚きの仕組みと真相
手首で測るスマートウォッチのデータは、病院で行われる精密検査と比べてどれほど信用できるのか。この疑問に対する答えは「就床時間・睡眠時間の把握は極めて正確だが、睡眠段階の判別はあくまで推計値」という線引きにある。
睡眠医学のゴールドスタンダードとされるのは、医療機関に入院して頭部や顔面に多数の電極を取り付ける「終夜睡眠ポリグラフ検査(PSG検査)」だ。PSGでは実際の脳波(デルタ波やシータ波など)、眼球運動、オトガイ筋の筋電図をリアルタイムで直接測定し、国際基準に基づいて睡眠ステージを30秒ごとに判定する。一方、手首のウェアラブル端末は脳波そのものを直接計測しているわけではない。あくまで「心拍間隔の微小な揺らぎ」と「手首の動き」から、AIが間接的に脳波の状態を類推しているに過ぎない。
日本国内および米国の睡眠学会で報告された臨床比較研究によると、スマートウォッチとPSG検査の間で「睡眠中か覚醒中か」の判定一致率は約90%以上と非常に高い。しかし、「浅い睡眠(ステージ1・2)」と「深い睡眠(徐波睡眠)」の境界線、あるいは「浅い睡眠とレム睡眠の識別」においては、一致率が約65〜78%程度まで低下することが実証されている。
また、血中酸素ウェルネス測定の仕組みも見逃せない。血液中の酸化ヘモグロビンと還元ヘモグロビンが特定の波長(赤色光と赤外線)を吸収する比率から動脈血酸素飽和度(SpO2)を推定する技術だが、手首の末梢血管は指先に比べて血流が弱く、寝返りによるセンサーのズレで数値が一時的に低く出るリスクがある。近年のApple WatchやGalaxy Watch等に搭載され話題を呼んでいる睡眠時無呼吸検知機能の真相についても、医療機器承認を取得した国・地域であっても「確定診断」を下すものではなく、呼吸の乱れや血中酸素の低下トレンドから「疑いがあるため専門医の受診を推奨するアラート(スクリーニング支援)」である点は明確に理解しておく必要がある。