『空の境界』両儀式がハーゲンダッツ苺を愛する理由と象徴的意味
式がストロベリー味を選ぶ最大の理由は、彼女が抱える特殊な感覚器官と精神状態に密接に結びついている。事故から目覚めた後の両儀式は、「直死の魔眼」を得た代償として、世界や己の存在に対するリアリティを著しく失っていた。何を食べても味が薄く感じられ、生きている実感すら覚束ない日々。その中で、ハーゲンダッツのストロベリーが持つ濃厚な甘みと鮮烈な酸味は、彼女の麻痺した感覚にダイレクトに響く数少ない刺激だったのだ。
声優の坂本真綾が演じる静かなトーンのセリフ回しも、このシーンの印象を決定づけている。淡々とスプーンを動かす挙動の裏には、生きている感覚を必死に確かめようとする哀切な渇望が隠されている。冷たいアイスが口中で溶ける瞬間だけ、式は自らが「生きている肉体」であることを実感できたのかもしれない。