川島なお美が『失楽園』で魅せた衝撃の熱演|渡瀬恒彦との真相に迫る
『失楽園』を語る上で避けて通れないのが、最終回における結末の衝撃です。社会的な居場所をすべて失い、親族や世間から断罪されながらも、二人は雪深い別荘へと向かいます。愛が最高潮の瞬間に命を絶つことで、老いや飽きによる愛の風化を拒み、永遠の合一を果たそうとする心中劇です。
ドラマ版のクライマックス、赤いワインに毒を溶かし、愛を確かめ合いながら息絶える名シーンの舞台裏では、凄まじい緊張感が張り詰めていました。演出サイドは照明やカメラアングルを極限まで削ぎ落とし、二人の役者の肉体と呼吸音のみに演出を委ねました。渡瀬さんは撮影直前まで川島さんと会話を交わさず、静かに集中力を高め合っていたと伝えられています。
渡辺淳一氏の原作小説では、死の瞬間まで結合したままの遺体というセンセーショナルな解釈が描かれましたが、ドラマ版では肉体の結合以上に「魂が溶け合う崇高さ」に重きが置かれました。死にゆく凛子の顔に浮かんだ恍惚と安らぎが交錯した微笑は、川島なお美という女優が生涯をかけて手に入れた到達点として、視聴者の記憶に鮮烈に焼き付けられました。