メンデルスゾーン春の歌の弾き方完全解説|アルペジオが濁る原因と指使い
演奏全体の完成度を決定づける最終要素が、春の歌ペダル踏み方とテンポの緻密な設計です。楽譜に記載されたペダル記号を漫然と追うだけでは、現代のコンサートグランドピアノでは音が飽和して濁りを防げません。
メンデルスゾーンが活躍した19世紀前半のピアノフォルテは、現代のピアノに比べて弦の張力が低く、残響が急速に減衰する楽器でした。そのため、楽譜上に長いペダル踏み込み指示があっても当時は美しく透き通って聴こえたのです。現代の高張力・長残響のピアノで当時と同じ感覚でベタ踏みすれば、音が濁るのは自明の理です。
このギャップを埋める技術が「ハーフペダル」と「シンコペーション・ペダリング」の徹底です。ダンパーが弦から完全に離れる深さまで踏み込まず、弦にわずかに触れるか触れないかの浅い踏み込みをキープすることで、伴奏の軽快さを保ちながら主旋律だけを適度につなぎ止めることができます。また、和音が変わるたびにペダルを踏み替える際、次の和音の打鍵音と「完全な同時」ではなく、「打鍵の直後」に素早く上げて踏み直すペダルの鋭敏なフットワークが不可欠です。
さらに重要なのが、春の歌テンポ設定です。楽譜の冒頭には「Allegretto grazioso(優雅に、やや速く)」と記されています。メトロノームの目安としては、付点四分音符=60〜69程度が理想的なレンジとなります。
初心者にありがちな失敗は、装飾音の難しさに気を取られてテンポが40台まで落ち、音楽が重苦しい葬送行進曲のようになってしまうケースです。反対に、テンポ80を超えて駆け抜けてしまうと、装飾アルペジオが耳障りな打撃音となり、メンデルスゾーン特有の貴族的で上品な気品(グラツィオーソ)が完全に蒸発してしまいます。ゆったりとした呼吸を保ちながらも、水面を滑るような前進運動を絶やさないテンポキープが求められます。