なぜパサつく?さつまいも栗きんとんをレンジでプロ級にする黄金比レシピ
手作りの栗きんとんで最も多い失敗が「鍋の中ではトロトロだったのに、重箱に詰めて冷えたらパサパサ・ボソボソになった」という現象です。栗きんとんがパサつく決定的な理由は、さつまいもに含まれるデンプンの性質にあります。加熱によって糊化(アルファ化)したデンプンは、冷える過程で水分を放出して元の規則正しい結晶構造に戻ろうとする「老化(ベータ化)」を起こします。さらに、煮詰める段階で水分を飛ばしすぎたり、砂糖の量が少なすぎて保水性を維持できなかったりすると、冷えた瞬間に水分が抜けて固くなってしまうのです。
パサつきを防ぐためには、「仕上がり時点で少し緩い(スプーンからゆっくり落ちる程度)」と感じる水分量を保ち、砂糖とみりんの保水力を最大限に活かした火入れを徹底する必要があります。
もう一つの大きな壁が「色のくすみ・変色」です。さつまいもを茹でると灰色や緑がかった茶色に変色してしまうのは、皮の直下に多く含まれるポリフェノール化合物(クロロゲン酸)が空気に触れて酸化し、さらに水中の微量な鉄イオンと結合することが直接の原因です。だからこそ、変色を防ぐ下処理とアク抜きの理由を理解することが仕上がりの明暗を分けます。
具体的には、以下の3つのステップを忠実に守るだけで仕上がりの透明感が劇的に向上します。
① 皮は「薄く」ではなく、筋のある形成層まで厚さ3〜5mmを目安に贅沢に厚くむくこと。
② 輪切りにした直後から、水に10〜15分ほどさらして表面のデンプンとアクを洗い流すこと。
③ 茹でる際、または水にさらす際に酢を数滴(水1リットルに対して小さじ1程度)加えること。弱酸性に保つことでクロロゲン酸の酸化重合を強力に抑制できます。
さらに、伝統的に使われる「くちなしの実」が手元になくても全く問題ありません。くちなしの実なしで黄金色にする裏技として、料理研究家の間でも定番となっているのが「食用ターメリック(ウコン粉末)」を耳かき1杯(約0.1g未満)だけ加える手法です。ターメリック特有の香りは加熱によって完全に飛び、さつまいもの風味を邪魔することなく、見事な黄金色を引き出してくれます。