牛乳は体に悪い説の真相とは?死亡リスクや骨粗鬆症の噂を徹底検証
「牛乳を毎日飲むと寿命が縮まる」「骨折が増える」という言説の震源地となったのが、2014年に世界的医学雑誌『ブリティッシュ・メディカル・ジャーナル(BMJ)』に掲載されたスウェーデン・ウプサラ大学の研究チームによる論文です。この研究では、スウェーデン人女性約6万1000人(39〜74歳)を約20年間追跡した結果、1日に牛乳を3杯以上(約680ml以上)飲む女性は、1杯未満の女性に比べて死亡率が約1.9倍高かったと報告され、世界中に衝撃を与えました。
研究チームは、牛乳に含まれる単糖類「D-ガラクトース」が慢性的な酸化ストレスや軽微な炎症を引き起こしている可能性を指摘しています。しかし、このデータを日本人にそのまま当てはめることには極めて重大な落とし穴が存在します。
厚生労働省の「国民健康・栄養調査」によると、日本人の平均的な牛乳・乳製品摂取量は1日あたり約80〜100gに過ぎません。スウェーデンの被験者のように「毎日牛乳だけで700ml近くを何十年もガブ飲みする」生活習慣を持つ日本人は極めて稀です。さらに同論文でも、ヨーグルトやチーズといった発酵乳製品を摂取していたグループでは、逆に死亡率や骨折率の低下が確認されています。
また、発がん性リスクに関する医学的エビデンスも部位によって結論が異なります。世界がん研究基金(WCRF)および米国がん研究協会(AICR)の大規模報告書によると、乳製品の摂取は大腸がんのリスクを「ほぼ確実に下げる」と評価される一方で、前立腺がんに関しては「過剰摂取(1日カルシウム量として約1500mg以上など極端な多量摂取)がリスクをわずかに高める可能性がある」と位置づけられています。乳がんについては因果関係を裏付ける強固な証拠はなく、むしろ予防的あるいは中立的なデータが多数派です。つまり、「牛乳を飲むと全身のがんリスクが跳ね上がる」というネットの言説は、文脈を無視した明らかな誇張表現と言えます。