尾崎豊『街路樹』の真実|逮捕と復活劇の裏に秘めた叫びを解剖
アルバム発売からわずか11日後の1988年9月12日、開場から間もない東京ドームにおいて一夜限りの復活コンサート『LIVE CORE in TOKYO DOME』が開催されました。尾崎豊にとって生涯最初で最後となった東京ドーム単独公演であり、動員された観客は実に5万6千人。チケットは即日完売となり、開演前の会場周辺は異様な熱気と緊張感に包まれていました。
しかし、このステージは華々しい祝祭ムード一色ではありませんでした。ステージに現れた尾崎は、過度な緊張とプレッシャーからか、序盤から激しく声を嗄らし、時に音程を外しながらも、自らを叩きつけるように全身全霊でシャウトを続けました。巨大なドームの音響の難しさ、新編成のバックバンド「The Heart」とのアンサンブルの模索など、音楽的な課題が浮き彫りになる場面も少なくありませんでした。
それでも、ライブが後半に進み『街路樹』やアンコールのナンバーが披露されるにつれ、ドーム全体がひとつの巨大な祈りの空間へと変貌していきました。完璧な技術を見せるエンターテインメントではなく、傷つき倒れかけた人間が血を流しながら立ち上がる生々しいドキュメンタリーを、5万6千人のファンは息を呑んで見つめました。現場を目撃したファンの手記には「尾崎が倒れてしまうのではないかという恐怖と、それでも歌い続ける姿への崇高な感動が入り混じっていた」と記されています。