太田裕美「赤いハイヒール」歌詞の意味とは?名曲の真相と制作秘話
「ねえ 友達なら聞いて下さい」という、聴き手の胸ぐらを静かに掴むような呼びかけから「赤いハイヒール」は幕を開ける。この印象的な歌い出しについて、作詞を手がけた松本隆は、単なる失恋ソングの枠組みを超えた「都市と個人の関係性」を鮮烈に切り取っている。
主人公は、都会へと旅立った幼なじみの少女を故郷から訪ねてきた人物だ。再会した彼女は、かつて田舎の野山を一緒に駆け回っていた頃の面影を失い、髪を流行のスタイルに整え、爪を染め、そして象徴的な「赤いハイヒール」を履いて都会の雑踏を歩いている。歌詞に登場する「そばかす」という単語は、かつての飾らない素朴さ、太陽を浴びて健康的に育った少女時代の象徴にほかならない。そのそばかすを化粧で消し去り、大人の女へと急激に変貌を遂げていく幼なじみに対し、主人公は言いようのない孤独と哀愁を覚える。
物語の核心は、童話『赤い靴』を想起させるメタファーにある。自分の意志とは無関係に踊り続けなければならない呪われた靴のように、都会の消費文化とスピード感に巻き込まれ、もう二度と素朴だったあの頃には戻れない少女の悲劇。松本隆の作詞意図は、変わりゆく友人を責めることではなく、「変化を受け入れることでしか都会で生きられない痛ましさ」を、客観的な語り手の視点から淡々と描き出すことにあった。