親学とはなぜ批判されたのか?発達障害をめぐる炎上と現在を徹底追跡
親学とは、明星大学名誉教授の高橋史朗氏らが中心となって提唱した家庭教育に関する思想・運動です。戦後の個人主義や核家族化によって家庭の教育力が低下したと主張し、「親としての学び」「家庭の再生」「伝統的子育て論」の重要性を説く名目でスタートしました。一見すると、新米の親が子育てを学ぶための有益な講座や啓発活動のように聞こえるため、当初は多くの一般保護者や地方自治体の関心を集めました。
しかし、この運動が猛烈な批判の炎に包まれた決定的な理由は、その理論の根底に「子どもの問題行動や発達障害は、親(とりわけ母親)の愛情不足や誤った育児環境がもたらした結果である」という極めて独断的で非科学的な因果関係を持ち込んだことにあります。
医学的見地から見れば、自閉スペクトラム症(ASD)や注意欠如・多動症(ADHD)などの発達障害は、生まれつきの脳機能の発達の偏りに起因する先天的な特性です。世界保健機関(WHO)やアメリカ精神医学会(APA)をはじめ、世界の医学界において「親の育て方や愛情の有無が直接の原因ではない」という事実は揺るぎない共通見解となっています。それにもかかわらず、親学推進派は「伝統的な子育て(母乳育児の徹底、添い寝・抱っこの重視、テレビやメディアの排除など)を行えば発達障害は予防・改善できる」と公言しました。この言説が、日々必死に子どもと向き合う保護者たちを深く傷つけ、医療・教育現場に決定的な不信感を植え付けたのです。