日立の株価はなぜ強いのか?上昇の決定打と今後の見通しを徹底検証
市場関係者が驚嘆するのは、日立製作所の株価上昇が一時的なテーマ性や円安頼みの業績上振れによるものではなく、「本業の稼ぐ力(キャッシュ創出力)の劇的な向上」に裏打ちされている点です。好調を決定づけた要因は、主に以下の3つの構造変化に集約されます。
第1に、世界的な電力グリッド(送配電網)需要の爆発が挙げられます。脱炭素社会に向けた再生可能エネルギーの連系拡大に加え、生成AIの急激な普及に伴うハイパースケールデータセンターの建設ラッシュが世界中で起きています。日立が2020年にスイスの重電大手ABBから約7,000億円超で買収したパワーグリッド事業(現・日立エナジー)は、変圧器や高圧直流送電(HVDC)システムで世界シェア首位を誇り、数年先まで設備受注が埋まるほどの歴史的特需を享受しています。「電力がボトルネックとなるAI時代」において、日立は世界で最も恩恵を受ける中核インフラ企業へと進化しました。
第2に、デジタルソリューション事業「Lumada(ルマーダ)」の驚異的な収益化です。日立が長年培ってきた電力・鉄道・産業機器などの「OT(制御・運用技術)」と、高度な「IT(情報技術)」を掛け合わせ、顧客企業の現場データを分析・最適化するこのプラットフォームは、いまや売上高数兆円規模、Adjusted EBITA(利払い・税引き・償却前利益)マージン15%前後を稼ぎ出す巨大な収益柱へと成長しました。単に機械を売って終わるビジネスモデルから、保守・運用・データ分析で継続的な月額収益(リカーリングレベニュー)を得るソフトウェア型ビジネスへの転換に成功したことが、投資家から極めて高いPER(株価収益率)を付与される理由です。
第3に、資本効率を徹底的に重視する経営姿勢への転換です。日立はかつて、数多のグループ企業を抱えるがゆえに企業価値が市場から割り引かれる「コングロマリット・ディスカウント」の象徴でした。しかし、後述する過酷な事業再編によって低収益事業をすべて整理し、ROE(自己資本利益率)やROIC(投下資本利益率)を明確な経営指標に据えた結果、機関投資家の信頼を完全に勝ち取りました。