なぜ無料?サー・ジョン・ソーンズ美術館の動く壁と2026最新予約法
サー・ジョン・ソーンズ美術館が一般的な美術館と決定的に異なるのは、建物そのものがひとつの巨大な「建築的実験装置」として機能している点です。ジョン・ソーン建築の真骨頂は、限られたロンドンのタウンハウスの敷地(リンカーンズ・イン・フィールズ12・13・14番地)を物理的な限界を超えて拡張して見せる、卓越した光と空間の演出にあります。
その象徴と言える最大の見どころが、館内奥に位置する「ピクチャールーム(絵画室)」に隠された絵画室の仕掛け壁です。わずか縦4メートル、横6メートル足らずの小部屋でありながら、壁面が三層構造の可動式ヒンジパネル(開き扉)になっています。係員がこの壁を開放する瞬間、奥から次々と隠された空間と絵画が現れ、来館者から感嘆の声が漏れます。
この動く壁の内部には、18世紀イギリスを代表する画家ウィリアム・ホガースの最高傑作として名高い連作『放蕩一代記(A Rake's Progress)』全8作や、痛烈な政治風刺画『選挙(The Election)』シリーズ、さらにはジョヴァンニ・バッティスタ・ピラネージによる巨大なエッチング群が整然と収められています。限られた壁面にいかに多くの芸術を共存させるかという、ソーンの並々ならぬ空間への執着が具現化した圧巻のギミックです。
さらに地下へと続く吹き抜け空間「セプルクラル・チェンバー(埋葬室)」の中央には、古代エジプト第19王朝のファラオであるセティ1世の石棺が堂々と鎮座しています。半透明のアラバスター(雪花石膏)で作られたこの石棺は、発見当時大英博物館が予算不足を理由に購入を断念したものを、ソーンが私財2,000ポンド(当時の巨額資金)を投じて買い取った歴史的遺物です。天窓から注ぐ一条の光が地下の石棺を照らし出す光景は、訪れる者を古代の神秘へと誘います。