山梨県立美術館はなぜミレーの聖地なのか?種まく人の見どころと攻略法
山梨県立美術館が「ミレーの美術館」と呼ばれるようになった契機は、1978年の開館準備期にさかのぼります。当時、全国の自治体で公立美術館の設立ラッシュが続いていましたが、多くの施設がジャンルを絞りきれず、特色の打ち出しに苦慮していました。
そうした中、山梨県が掲げた方針は「何でも集めるのではなく、世界第一級の目玉コレクションを確立する」という極めて明確な戦略でした。当時の県知事や創設準備室の専門家らは、山梨の豊かな自然と農業精神に通底するテーマとして、19世紀フランスで大地に生きる農民の尊厳を描いたジャン=フランソワ・ミレーに着目しました。
1977年、山梨県はロンドンのサザビーズ・オークションに出品されたミレーの代表作『種まく人』を、当時の地方自治体の美術品購入としては異例の約1億円(諸経費別)で落札しました。この大胆な決断は当時大きな話題を呼びましたが、結果として美術館の明確なアイデンティティを確立することに成功します。
その後も『落穂拾い、夏』『夕暮れに羊を連れ帰る羊飼い』『ポプラ並木』といった油彩画、パステル画、版画を継続的に収集し、現在では関連作家を含むバルビゾン派コレクションとして国際的にも高い学術的評価を獲得しています。