山下清とおにぎりの真実|ドラマとの決定的な違いと驚きのもらい方
ドラマ『裸の大将』では、旅先で親切にしてくれた人々に感謝のしるしとして、その場で貼り絵を描いて手渡すシーンが定番でした。しかし、これも実話とは全く異なるフィクションです。
実際には、清は旅の荷物に絵の具や和紙、ハサミなどを一切入れていませんでした。リュックサックの中身は拾った茶碗や着替え程度で、旅先で絵を描くことは生涯ただの一度もありませんでした。
彼には一度見た風景や色彩、人々の配置を写真のように頭脳へ焼き付ける「直観像記憶(カメラアイ)」という驚異的な特殊能力が備わっていました。日本中を数ヶ月から数年かけて放浪し、八幡学園や東京の実家に戻ってくると、脳内に完全に保存された記憶だけを頼りに、恐ろしいほどの集中力でちぎり絵を制作したのです。
花火の閃光と人々の影が見事に表現された不朽の名作『長岡の花火』や、雄大な自然を捉えた『桜島』などの代表作は、すべて現場のスケッチなしに、後から記憶のみを頼りに生み出された奇跡の芸術でした。