エッジワース・カイパーベルトの真実|冥王星降格と太陽系最果ての謎
2015年7月14日、NASAの無人探査機ニューホライズンズが冥王星系をフライバイ(接近通過)した際、地球上の研究者たちは送られてきた高解像度画像に息を呑みました。探査前の大方の予測は、「太陽からあまりに離れているため地質活動は数十億年前に停止し、月面のようなクレーターだらけの死の世界が広がっている」というものだったからです。
しかし画面に映し出されたのは、脈動する生きた地質の世界でした。窒素や一酸化炭素が凍った氷河が対流し、クレーターが自然に埋め立てられて消失している真っ白な平原、氷の地殻から吹き出す氷火山(クライオボルケーノ)、そして標高3,000メートルを超える水氷の山脈群。さらに冥王星の地下には、現在も凍結せずに残された「液体の内部海」が存在する証拠まで次々と提示されました。
ニューホライズンズ計画の首席研究員アラン・スターン博士は、記者会見で「太陽系は我々の貧困な想像力をはるかに超えていた。極限の極寒地帯であっても、放射性同位体の崩壊熱と揮発性物質の物理変化が結びつけば、驚くほど活発な地質活動が維持される」と熱弁を振るいました。
さらに探査機は2019年1月1日、カイパーベルト深部に潜む小天体アロコス(Arrokoth:旧称2014 MU69)への近接探査に成功しました。太陽から約43 AUの地点で撮影されたアロコスは、2つの平らな球体が穏やかに接触してできた「雪だるま型」の極めて原始的な姿をとどめていました。
この形状は、原始惑星系円盤の中で微天体同士が激しい衝突破壊を経験することなく、静かに重力で寄り添うように合体した決定的な証拠です。エッジワース・カイパーベルトの深部は、激変を逃れて太陽系創成期の初期条件をそのまま保存している、宇宙考古学上の至宝であることが実証されたのです。