前田美波里と資生堂伝説|ポスター盗難騒動から現在までの全軌跡
昭和41年(1966年)の初夏、資生堂が展開したサマー化粧品「チェリーピンク」のプロモーションは、日本のグラフィック広告における最大の事件となりました。駅構内や化粧品店の店頭に貼り出された前田美波里さんの特大ポスターが、夜間を中心に次々とカッターナイフで切り取られ、盗難被害が全国で相次いだのです。
当時はカラー印刷の大型ポスター自体が貴重だった時代です。しかも、そこに写っていたのは身長168センチという当時としては抜群のプロポーションを誇り、ビキニ姿で堂々とポーズを取る若き前田さんの姿でした。あまりの盗難の多さに、資生堂側は急遽「ポスターを高く掲示する」「夜間は店内にしまう」といった異例の防衛策を講じざるを得なくなりました。
この前代未聞の騒動は新聞や週刊誌で大きく報じられ、結果としてブランドの知名度と商品の売上を爆発的に押し上げる契機となりました。単なる商品の販促ツールを超えて、1枚の印刷物が人々の所有欲をここまで刺激した事例は、日本の広告クリエイティブ史上でも極めて稀有な出来事です。