舞洲スラッジセンターの正体|800億の建設費と見学の真相を徹底追及
舞洲スラッジセンターの正体は、大阪市建設局が所管する下水汚泥処理施設だ。市内各所の下水処理場から送られてくる濃縮汚泥を集約し、高温で溶融スラグ化する重要拠点で、2004年に全面竣工した。一見すると商業テーマパークや巨大な現代美術館にしか見えない異様な外観は、オーストリア・ウィーン出身の世界的芸術家兼建築家、フリーデンスライヒ・フンデルトヴァッサー(1928〜2000年)の基本設計に基づいている。
なぜ大阪市は、極めて実用的なインフラ施設に巨匠のアートワークを採用したのか。その設計理由の根底には、1990年代後半に大阪市が威信をかけて推進していた「2008年大阪オリンピック構想」が存在する。市は人工島である舞洲をメインスタジアムやアリーナが集う「スポーツアイランド」として位置づけ、世界中から集まる来訪者をもてなすシンボリックな景観の創出を企図していた。
フンデルトヴァッサーの建築哲学は「自然界に直線は存在しない」「直線は悪魔の道具」という徹底した自然調和の思想にある。窓の形や配置は一つとして同じものがなく、屋上や外壁には多様な樹木が植えられ、人工物と自然の共生が表現された。通常であれば近隣住民から忌避されがちな「迷惑施設(NIMBY施設)」を、市民が誇れる美しいランドマークへと昇華させようとした意欲的な試みだった。だが、2001年に大阪オリンピックの誘致が北京に惨敗したことで、その壮大なモニュメント構想は急速に政治的・社会的な逆風へと転じることとなった。