映画バー「八月の鯨」徹底解剖!独自の頼み方・値段と評判の真相
この映画バーを語る上で欠かせないのが、店名のルーツとなった1987年製作の映画『八月の鯨』(原題:The Whales of August)の存在だ。イギリスの名匠リンゼイ・アンダーソンがメガホンを取り、サイレント映画時代からの大女優リリアン・ギッシュと、ハリウッド黄金期の名女優ベティ・デイヴィスがダブル主演を務めた珠玉の人間ドラマである。
物語の舞台は、アメリカ・メイン州の小島に建つ別荘。かつて夏になると入江に鯨の群れが姿を現したこの島で、老境を迎えた姉妹が寄り添うように暮らしている。盲目となり頑なな態度を崩さない妹セーラ(ベティ・デイヴィス)と、そんな妹を甲斐甲斐しく世話しつつも人生の黄昏を静かに受け止める姉リビー(リリアン・ギッシュ)。老いへの葛藤、過去の確執、そして島に訪れる最後になるかもしれないひと夏の出来事が、息を呑むほど美しい光と自然の中で繊細に描き出される。
本作において、当時90歳を超えてなおスクリーンで圧倒的な気品を放ったリリアン・ギッシュの姿は、「映画というメディアが人間の記憶や人生の美しさを永遠に留め置く力を持つこと」を象徴している。バー「八月の鯨」がこのタイトルを掲げている背景には、スクリーンの中で過ぎ去っていった数々の物語と人生の記憶を、1杯の酒を通して人々の心に甦らせたいという、映画文化への深い畏敬とオマージュが込められているのである。