漫画『惡の華』結末の真相と鬱展開の魅力|仲村さんの現在まで徹底考察
本作のドラマ性を語る上で欠かせないのが、春日と佐伯奈々子の関係性の変遷です。連載初期、佐伯さんはクラスの男子全員から憧れられる完璧なマドンナとして描かれていました。しかし、物語が進むにつれて露わになる彼女の内面は、多くの読者に仲村さん以上の戦慄を与えました。
佐伯さんは、春日が自分の体操着を盗んだことを知り、さらに仲村との異常な契約に縛られていることを看破しながらも、春日を拒絶するどころか自ら交際を申し込みます。そこにあったのは、単なる恋愛感情を超えた「無菌室で育てられた優等生の、泥濘への憧れ」でした。常に親や教師の期待通りに振る舞い、「良い子」を演じ続けてきた佐伯さんにとって、自らの恥部を晒し、常識を逸脱していく春日と仲村の姿は、恐ろしくも抗いがたい眩しさを放っていたのです。
ネット上の掲示板やレビューコミュニティでも、佐伯さんに対する考察は白熱しました。
「連載当時は仲村さんが狂っていると思っていたが、読み返すほどに一番底知れない闇を抱えていたのは佐伯さんだと気付かされる」
「春日に『私をめちゃくちゃにして』と迫る佐伯さんの表情は、どのホラー漫画よりも怖かった」
「優等生の殻を破りたかったけれど、最後まで仲村さんのように全てを捨て去る狂気になりきれなかった佐伯さんの挫折が痛々しい」
春日は佐伯さんを「清純な天使」として神聖視し、佐伯さんは春日を「自分を退屈な檻から救い出してくれる変革者」として利用しようとしました。お互いが相手の素顔を見ず、自らの幻想を押し付け合っていたからこそ、二人の関係は破局を迎えざるを得なかったと言えます。夏祭りの心中現場を目撃し、春日から完全に拒絶された佐伯さんが見せた絶望の叫びは、思春期の人間関係における最も残酷な断面を映し出していました。