なぜ目が回らない?フィギュアスケートのスピン種類とレベル4の秘密を徹底解説
1秒間に5回転以上という猛烈なスピードで回転しながら、直後に何事もなかったかのように優雅なステップや次のジャンプへと移行するスケーターたち。一般人であれば数回転しただけで千鳥足になってしまう状況で、なぜ彼らは平然としていられるのでしょうか。
バレエダンサーの場合、首を最後まで残して正面を素早く見直す「スポッティング(首振り)」という技術を用いますが、フィギュアスケートの超高速スピンでは首を振る余裕はありません。スケーターは基本的に視界を1点に固定せず、景色が流れるままに身を任せています。
この驚異的な耐性を生み出しているのは、内耳の三半規管と脳の連動による「前庭動眼反射の適応抑制」です。人間の耳の奥にある三半規管の中にはリンパ液が入っており、体が回転するとこの液体が揺れて感覚毛を刺激し、脳に回転刺激を伝えます。急停止した際にも慣性でリンパ液が流れ続けるため、脳が「まだ回っている」と錯覚し、眼球が小刻みに揺れる「眼振(がんしん)」が起きて目眩を感じます。
しかし、トップスケーターは幼少期からの長大な練習によって、小脳が「この回転刺激は異常事態ではない」と学習し、前庭動眼反射を自律的に抑制する神経回路を形成しています。さらに、スピン終了直前に頭をわずかに逆方向へ傾けたり、停止の瞬間に視線をブレードの先端や氷上の特定ポイントへ素早く落とし込んだりすることで、リンパ液の揺れを最小限に抑える職人技のような身体操作を体得しているのです。