博物館の起源「驚異の部屋」とは?貴族の珍品収集が放つ狂気と美
「驚異の部屋」の本来の意味を探ると、ドイツ語の「Wunder(驚異・奇跡)」と「Kammer(部屋・小部屋)」を組み合わせた言葉に行き着きます。中世からルネサンス期へと移り変わる16世紀半ば、ヨーロッパの特権階級が自らの邸宅内に設けた「森羅万象を凝縮した展示室」がその始まりです。
当時集められた品々は、大きく以下の4つのカテゴリーに分類されていました。
- ナチュラリア(Naturalia):自然界の産物。珍しい動物の剥製、貝殻、化石、奇形の植物、鉱物など。
- アルティフィシアリア(Artificialia):人間の手による工芸品。細密画、彫刻、からくり仕掛けの自動人形(オートマタ)など。
- スキエンティフィカ(Scientifica):最新の科学機器。天球儀、日時計、羅針盤、光学レンズなど。
- エキゾティカ(Exotica):新大陸やアジア・アフリカからもたらされた異国の武具、民族資料、香辛料など。
この未分化な収集形態こそが、博物館の起源(ルーツ)にほかなりません。当初は混沌としていた部屋の品々が、18世紀の啓蒙思想やリンネによる生物分類学の登場によって整理・細分化され、「自然史博物館」「美術館」「科学館」といった専門機関へと枝分かれしていった経緯があります。イギリスのオックスフォードにあるアシュモレアン博物館や大英博物館の初期コレクションも、個人が集めたヴンダーカンマーが母体となっています。