篠山紀信の写真集解剖『Santa Fe』未公開秘話とプレミア価値
1990年代初頭、日本のメディア界を揺るがす巨大な渦が発生した。その爆心地にいたのが、巨匠・篠山紀信である。当時18歳だった宮沢りえを被写体に迎えた写真集『Santa Fe』は、発行部数150万部という前代未聞の大記録を打ち立てた。街中の書店に行列ができ、ワイドショーが連日この話題を報じるなど、まさに社会現象そのものだった。
しかし、この歴史的ムーブメントの伏線はすでに敷かれていた。それに先立つ1991年前半、女優の樋口可南子を撮影した写真集『Water Fruit』の存在だ。それまで日本の出版業界で暗黙のタブーとされていた「ヘアヌード」という表現の壁を打ち破り、美的なアート写真として提示されたこの作品は、美意識の基準そのものを塗り替えた。両作が見せた圧倒的な完成度は、単なるスキャンダリズムを凌駕し、写真芸術の新しい扉を開く契機となったのである。