姿勢と歩行を支配する網様体脊髄路の真実!リハビリ現場の決定打
私たちが日常でコップに手を伸ばすとき、意識は完全に「手先の動作」に向いています。しかし、腕を前方に突き出せば、物理法則に従って身体の重心は前方に崩れます。それにもかかわらず身体が倒れないのは、手先が動くよりもわずかに早く、背筋や下肢の筋肉が自動的に収縮して姿勢を支えているからです。
この無意識下で行われる卓越した姿勢制御メカニズムの司令塔こそが、錐体外路系の代表格である網様体脊髄路です。網様体脊髄路は、系統発生学的に非常に古い神経路であり、魚類や両生類の時代から体幹をうねらせて移動するために使われてきました。二足直立歩行を獲得した人類においても、この古いシステムが脳幹網様体を中心として極めて洗練された形で受け継がれています。
随意的な手先の運動(巧緻動作)を担当する錐体路が「オーケストラのソロバイオリニスト」だとすれば、網様体脊髄路は「演奏の土台を支える重低音のリズム隊とステージそのもの」です。土台が激しく揺れていれば、いかに優れたバイオリニストでも名演奏は不可能です。運動麻痺のリハビリテーションにおいて、末梢の分離運動ばかりを反復させても実用的な動作に結びつかない背景には、この網様体脊髄路による姿勢基盤の破綻が存在します。